囚われの恋人

囚われの恋人
キャスト: 顕上晃(森川智之)×七絵行都(私市淳)・顕上芳隆(檜山修之)×七絵行都(私市淳)他

やだもう怖いってばwwwww 芳隆は悪いやつだなあ。てゆか、なんか欠落してるんだよね。これも買ってからしばらく経っていて、最初はみんな怖すぎて聴けなくなっちゃって、しばらく寝かせておいたのでした。原作も買ってみました。芳隆主役の続編があると聞いて、そっちも。

お話はですね。人を大事にするという感情が欠落している芳隆が、弟の晃に行都を寝取られる話です。全然違うだろ、という抗議は受け付けないぜ。(ぉぃ ……一応本来は、ヒドい大人に囲われてた行都が、内心惚れてた晃と、すったもんだの末幸せになる話です。


行都は幼い頃に芳隆に借金のカタに囲われたせいで、「幸せ」がどんなものかがよく判らなくなっています。晃のことは、ずっと好きで。だけど、こんな自分が彼に好意を抱くなんてとんでもないと思い込んでいる。晃も行都が好きなんだけど、行都が晃への好意を封印しているために、自分が好意を抱いていると言い出せないでいる。行都の、「一緒にいられるだけでいい」というささやかな願いは、ささやかすぎてかえって晃を苛立たせています。自分に晃への好意を許していない行都は、ことあることに晃の好意を拒絶して、晃に期待を抱かせないから。

それが、晃に自分が芳隆の愛人だとバレたことから、関係は動き始めます。芳隆は、晃に行都が金の為に芳隆と寝ていると思わせ、それに腹を立てた晃は苦悩しつつも行都を無理やり犯します。哀しいすれ違いは続きますが、元々好きあってる同士、関係が動けば真実はあらわになってきて。裏腹な言葉に隠された思いに、互いに言わずとも気づいてゆく。んで、ハッピーエンドですよ。

遊園地デートのシーンは甘くて。儚いけれども幸せで。切なかったなあ。

そんでまあ、芳隆さんなんですけども。彼は、人を大切にするという気持ちが判らない。行都に訳の判らない執着はあるけれど、それがなんだか判らないのです。結果、行都を怯えさせることしかできなくて。どれだけ行都を蹂躙しても、行都から何もかもを取り上げても、本当に欲しいものは手に入らないのでした。いや、行都の何が欲しいのかすら、多分芳隆には判っていません。自分が欲しいものが明確じゃないが故に、行都から全てを奪おうとしている。行都からのキスをねだったり、晃を罠にはめて行都が軽蔑されるように仕向けたり。そうして奪ってみては、「これは違う」と投げ捨てたりする。行都のせいにして責めたててみても、空しいばっかりで。ダメな人なんですけどもね、まあ、かわいそうな人です。
続編の小説では、その欠落に気づく過程が描かれています。CDになんねぇかなあ。

オマケCDでは、欠落が埋まった芳隆と、行都との邂逅が描かれています。少し柔らかくなった芳隆の声が聴けますです。相変わらず意地悪くて傲慢なんだけど、ちょっと茶目っ気も覗くような。よかったねえ芳隆、と思ったので、だからぜひとも続編をですね。聴きたいですよ。

檜山さんの鬼畜は相変わらず怖いです。抑えたトーンの中でなんか黒々としたものが渦巻いてて。鋭く冷たい台詞の裏に、たぎるものがふつふつと。。「好きって言え」と迫るとこがピークですが、よく聴くと端々に行都への想いが滲んでいます。

森川さんも怖いんだよな。もどかしい想いをずっと抑えたまま、割と怒ってることが多いので。行都を大事にしたいのに、行都がそれを許してくれない。控えめに示した好意でさえ、拒絶されてしまうので。なんだかずっと傷ついてるんだよなー。行都と芳隆の関係の謎がとけ、色々腑に落ちた後はひたすらかっこいいです。

私市さんの怯え演技が真に迫りすぎなのも、多分このCDが怖い理由のひとつですw 行都にシンクロすると、世界は怖いものだらけなんだよね。自分への好意を一切信じない行都は、ネガティブな想いばかりを受け取って。だから幸せから遠ざかっちゃうんだよなー。

ふう。ようやく感想文が書けたー。よかったよかった。